泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第87回 『技術系学生の日本語習得の苦労と指導』

タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号はTNI山口ひとみTNI語学・教養課程部 常勤講師のJセミナーでの表記タイトルの講演(2019.6.12実施)をまとめたものです。以下はやや前置きになりますが、読者の皆さんに理解していただきたいことです。 ●TNIは全学生に日本語学習を必須単位にしています。大学の教育内容は、タイ政府高等教育・科学技術省の規程に従い、特に工学部の自動車工学課程などは、日本語・英語を含む約1500時間(≒最低144単位)を4年間で習得しないと卒業できません。  日本語学習を全学生に課す意味は、第1に日本語は日本のものづくりを理解する大きな手がかりであること、第2に日系企業就職に重要なツールでもあります。特にカイゼン、ホウレンソウ、5ゲン主義など、単純に他の言語に翻訳できず、その背景、文化環境を理解してもらう必要があります。さらに最近の日系企業のタイ進出は、語学が必ずしも得意でない方が、一人で来られることも多く、専門技術と日本語ができる人材を求めています。  Jセミナーは年2回(6月・11月)、日系企業と日本人向けに実施しており、タイ人から日本企業と日本人に興味あるテーマを日本語で話してもらうのが特徴です。皆様のご参加を期待しています。
編者:吉原秀男(Yoshihara Hideo)泰日工業大学(TNI)学長顧問

1.TNIにおける日本語教育

日本語は全学生必修だが、学習時間などで2つの対象に分かれ、今回はBJ (経営学部日本語・経営学コース)でない、JPN(一般日本語コース:工学部・情報技術学部+経営学部のBJコース以外)をご紹介する。

2.JPNにおける日本語教育

・学習時間:1週間➡1.5時間×2回=3時間 ・学習期間:1学期➡15週(15週×3時間=45時間)(1年は前・後期に分かれる) ・必修科目:5科目(5学期間×45時間=225時間)➡3年生前期まで必修 ・選択科目:2科目あるが、英語を選択し、日本語を選択しない学生もいる。 ・1クラスの人数:35名まで。 ・開講クラス数:1科目あたり28クラス程度。 ・必修科目教材は写真を参照。 ・指導は、タイ人と日本人のペアによるティーチング。 ・教科書の構成:Can do(…できる)を重視している。 ・課の構成内容 これまでの主流は文型積み上げ方式で、コミュニケーションと離れる嫌いがあった。 ・このコミュニケーション重視では、国際交流基金のスタンダードの木やCan-do 6つのレベルが参考になる(図表参照)。 ・「コミュニケーション言語能力」の土台をつくり、言語能力➡受容(聞く・読む)、産出(話す・書く)、言語知識、コミュニケ―ション能力を培う。 ・また6つのレベルのうち、基礎段階のA2を目標にしている。 ・基礎段階で卒業したとしても、卒業後も自ら日本語を学び続けられるような、自律的な学習者の育成を目指している。 (次号へ続く)

 

*参考: JF日本語教育スタンダード https://jfstandard.jp/summary/ja/render.do Can-do 6つのレベル https://jfstandard.jp/pdf/cando_6levels.pdf 「学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」(CEFR) 共通参照レベル: 全体的な尺度 https://jfstandard.jp/pdf/whole_standard.pdf

 

2019年12月1日掲載

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