タイ版 会計・税務・法務

【第67回】 BOI制度の改正動向について

Q:BOI投資奨励制度が年明けから変わるという話を聞きますが。

A:はい。2014年9月19日、BOIは2013年1月に提示されていた新投資奨励制度案を修正する形で、2015年~2019年の投資奨励戦略を作成・公表しました。当該新戦略は2015年1月以降適用となる見込みで、主な内容としては以下のようになっています。

投資奨励となる事業は7つの区分(現行のものと同じ)に分けられており、BOIはハイテク産業、高付加価値産業、技術開発・デザイン業、または環境にやさしい事業といった分野のプロジェクトにつき特に重視することとされています。

現行制度と比較すると、以下のようになります。

旧投資奨励 新投資奨励案 説明
幅広い事業に奨励 重要事業に集中的かつ優先順位を付けて奨励 従来投資奨励がなされていた240の事業区分のうち、約40の事業区分が投資奨励外に(例:パン製造、緑茶製造)

この40の事業区分のうち税務上の恩恵を受けている事業区分は、その恩恵を失う一方、別の恩恵を受けることができるものとする。

セクター基準 セクション・価値基準 企業競争力を高めるための活動(例:技術開発、製品・パッケージデザイン、先進技術訓練、タイサプライヤーの発展に資する事業、工業団地/区域に立地する事業)を行うプロジェクトに対しては、他の恩恵を与える。
ゾーン制 クラスター制 “インダストリアル・クラスター”が現行の”地域(ゾーン)”の代わりになる。
税務上の恩恵重視 事業振興に資する恩恵重視 税務上の恩恵の代わりに、BOIは、『非税務恩恵の向上』、『ワンストップサービスのサービス向上』、『投資環境の改善』、『人材市場の確保』、『他の政府所管と協調した企業サポートの充実』を図る。
主としてインバウンド投資が対象 インバウンドに加え、アウトバウンド投資も対象 インバウンド(タイ国外からタイへの投資)に焦点が置かれていた投資奨励を、今後はアウトバウンド投資(タイからタイ国外への投資)に対しても行い、タイビジネスの競争力を高める。
投資規模に焦点 投資付加価値に焦点 従来『投資そのものの規模』に主眼を置いていた投資の評価方法を『投資から生み出された価値の規模(例:投資奨励事業が生んだ付加的価値)』にシフトさせること、また、その評価のためにBOIがKPIを設定することを予定。

Q:実は弊社は年内にBOIのプロジェクト申請を考えているのですが、この申請への影響は考えられるでしょうか。

A:少なくともBOIは本新投資奨励制度の発効日以前であれば現行の投資奨励制度が有効である旨を発表していることから、それまでに申請を行えば現行の投資奨励制度の枠組みの中での判断、並びに投資奨励がなされることになります。新投資奨励制度に変わることでメリットが生じるか否かについては個別のプロジェクトによって異なるかと思われますので、専門家に照会されることが望まれます。

 

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください。

     2014年12月

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