タイ版 会計・税務・法務

【第76回】 セール・アンド・リースバック取引について

Q. 弊社は資金繰りの関係から、従来から使っていた製造用の機械設備をリース会社に売却し、同時にリース会社よりリースを受ける(従い、この取引の前後を通じて、弊社は当該製造用機械設備を使用し続けることになる)という取引を実行しようと思っています。この際の会計上の留意点について教えてください。

A. 当該取引の形態は所謂『セール・アンド・リースバック取引』と呼ばれ、条件によって特有の会計基準に準拠する取引になります。御社のリース条件は、どのようになるでしょうか。

 

Q. 弊社のリース条件は以下の通りです。

1. 開始時のリース年数は5年とし、キャンセル不可。年次のリース料支払いは492,000 THBとする。
2. 当該機械設備の時価は2,500,000 THB、見積利用可能年数は5年とする。
3. 弊社は、残存価値(500,000 THB)で当該機械設備を購入する権利を有する。
4. 簿価と取引価格との関係性は、以下の通りである。

(単位:THB)

取引価格(公正価値) 2,500,000
簿価
製造用機械設備・取得価格 2,450,000
減価償却累計額 △  155,000 2,295,000
セール・アンド・リースバックからの未認識利益 205,000

A. まず、当該セール・アンド・リースバックが会計上の『ファイナンス・リース』『オペレーティング・リース』のいずれに該当するかの検討を行います。

この点、
I. リース期間が、見積利用可能年数に等しい(TAS 17 パラグラフ 10.3参照)
II. リース開始日において最低リース料総額の現在価値が、リース対象資産の公正価値と少なくとも実質的に一致する(TAS 17パラグラフ10.4参照)
事から判断し、当該セール・アンド・リースバック取引は、『ファイナンス・リース』として分類されることになります。

また、TAS 17パラグラフ58、59には以下の記載があります。

I. セール・アンド・リースバック取引とは、資産の売却と、その同一資産をリースバックすることをいう。リース料と売却価額は一括して交渉されるので、通常は相互に関連している。セール・アンド・リースバック取引の会計処理は、リースの種類によって決定される。
II. セール・アンド・リースバック取引がファイナンス・リースになる場合、売却代金が帳簿価額を超える額は、売手である借り手によって収益として即時に認識してはならない。それに替えて、それを繰り延べ、リース期間に渡って配分しなければならない。

以上を鑑みると、当該取引は以下の通り記帳されることになります。

借方 貸方

取引時点

 

【機械設備のセール・アンド・リースバックの認識】

現金預金 2,500,000
減価償却累計額 155,000
機械設備 2,450,000
セール・アンド・リースバックからの未認識利益 205,000

 

【ファイナンス・リース債務の認識】

リース資産(公正価値) 2,500,000
リース債務 2,500,000

 

会計年度末時点

 

【リース料支払の認識】

リース債務 492,000
現金預金 492,000

 

【ファイナンス・リース資産の減価償却(= 2,500,000 / 5年)】

減価償却費(= 2,500,000 / 5年) 500,000
減価償却累計額 500,000

 

【繰延セール・アンド・リースバックからの未認識利益の実現(= 205,000 / 5年)】

セール・アンド・リースバックからの未認識利益 41,000
減価償却費 41,000

 

なお、本文書は一般的な検討を行ったものであり、個別のケースで問題が発生した場合には、多くの場合関連法規の検討や専門家のアドバイスが必要となります。そのため、本文書の著者及び所属先は、本文書の掲載内容に基づいて実施された行為の結果、並びに誤情報及び不備については責任を負いかねますのでご了承ください

 

2015年9月

 

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