泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第109回 『TJICとタイ―日本の産業協力』

タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。コロナ禍が3年目に入り、TNIでもオンライン主体の授業が続いています。前年6月開始の2021教育年度の入学生数は1033人、卒業生は924人でしたが、式を行うことができませんでした。オンラインのみの授業が2年も続くと、やめる学生も出てきます。教職員・学生ともブースターショットを受けていますが、厳しい状況は続きます。

コロナ禍で学生とのコミュニケーションをどう図るかは、大きな課題ですが、大学の設立のミッションを全学生に伝えるという意味で、キャンパスにある設立貢献者の銅像のビデオをつくりました。今年はTNI最大設立貢献者の穂積五一先生の生誕120年に当たります。全学生だけでなく、国際協力、人材育成、技術移転の好例として、皆様にも参考にしていただければ幸いです。

本号では、最近できたタイ―日本産業協力機構についてチラパン会長がTNI日系企業勉強会オンラインセミナーで行った講演から、日系企業と日本企業への興味ある新しいサービス内容をご紹介します。

TJICとタイ―日本の産業協力
〇チラパン・ウンラパトーンTJIC会長(タイ-日本産業協力機構)
〇ランサン・ラートナイサット (TNI副学長・モデレータ)

オンライン・セミナーで、ランサン・モデレータが事前に視聴者の関心事項をまとめて質問し、チラパン会長が答える、という形で進行、視聴者の質問も回答の中に要約されています。
第1問:タイ-日本産業協力機構(TJIC)の概略と設立の背景を紹介してください。

•TJIC はタイ工業連盟(FTI)の下、2020年に設立されました。目的は、タイと日本のビジネス・産業関係と協力を強化することで、特に、日本からの投資促進、経済産業の情報交換, 人材育成、双方の希望に基づく活動などを実施します。当面、日本企業と日系企業に対し、次の4つの重要業務を予定しています。
1. 産業・ビジネスのネットワーク構築と支援:盤谷日本人商工会議所(JCC)のメンバーを勧誘して、FTIの45産業分野1万社に加わってもらいます。そして、相互協力で、タイ国のビジネスと産業に貢献、さらに、政府機関や他の民間機関ともっと緊密な関係または協力を図ります。
2. 投資情報・意見交換機会提供:投資決断の正しい理解のために投資家に正しい情報、役に立つ情報を提供することで、また同じ産業分野にあるタイと日本の企業の間の情報交換を促進します。
3. 人材開発支援:日本の投資家に最も重要な投資条件は質の良い人材です。 従って投資家希望の人材開発、また、Re-Skill, Up-Skill 方式によって、産業界の技術者・技能労働者を育成し、イノベーション時代に適する技術・技能を持つ人材を育成することが重要です。現在、政府及び民間の人材開発機関と連携してサポートしようとしています。
4. 日本の先端農業技術のタイ移転促進:もう1つの重要な業務はタイの農業を発展させることで、農家がムダを減らし、重労働を減らし、収入を増やすために、非常に優れた日本からの近代的農産業技術をタイに導入して、関係者に伝達することを検討します。

•以下は背景です。日本のタイへの投資は第二次世界大戦後最初の国の1つで、これまで50年以上に及びます。また、日本はタイでの直接投資額の一番多い国で、タイ産業の発展に非常に役立ち、特に自動車、電気電子産業は日系企業、タイ企業および合弁企業によって、新しいサプライ・チェーンが出来上がり、タイ人にたくさんの仕事が作られました。

•ご存知のとおり、両国の関係史は古く、お互いに助け合ってきました。この2022年にちょうど修好135周年になり、非常に喜ばしいことです。TJICも 今後両国の関係をもっと深めていく一部分になれれば幸いです。

•2018年に政府が、国の安定、高所得、持続的発展の基盤づくりのための国家20年戦略を策定しました。

同時にもう一つの方針は東部経済地域プロジェクト、いわゆるEECが始まりました。国外からの投資を呼び込むためのメガプロジェクトで、タイにおける投資に魅力的な地域になるに違いありません。(次号につづく)

 

22年3月7日掲載

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