泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

第110回 『TJICとタイ―日本の産業協力2』

タイでのものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。本号では、前号に引き続き、チラパンTJIC会長に、ランサンTNI副学長が問い合わせる形で、『タイと日本の産業協力事業について』お話しいただきます。

なお6月から大学では新年度が始まり、日本人学生も対象になる新設泰日国際学院4課程と学士資格を短期間で取れる社会人9課程も始まります。ニュースレターNo.22、No.23(上写真)をウェブサイトで分かり易く紹介しています。ご覧ください。

TJICとタイ―日本の産業協力2

第2問:チラパンさんご自身がこのTJICの会長に就任したきっかけと、組織構造を紹介ください
◦最初にタイ工業連盟(FTI)の役員から、TJIC設立について誘いがありました。TJICの形はすでに存在しているタイ-中国産業協力機構と同じで、FTIの日本向けの窓口のような立場です。私自身は日本での教育や研修を受け、帰国してから日本のビジネスに携わって現在まで50年になり、この任務は国と社会に貢献することと考えて、就任を引き受けました。TJIC は2020年にFTIの委員会の形で設立、FTIの中の独立機関として、国内外の日本関係活動などを担当します。

第3問:タイに投資したい日本企業はTJICのどんなサービスを利用できるでしょうか。またタイの日本企業は、どんな相談ができますか?
◦TJICは喜んで、タイに投資を希望する日本企業をサポートします。特に投資の決断に役に立つ情報提供、公共機関に関する詳しい情報、あるいはタイスタイル組織、労務管理に関する有用情報の提供、意見交換です。FTIはタイ全国に数万社のメンバーがいて、皆さんに各方面からの情報を十分に提供できるでしょう。例えば、ショートリストを作り、合弁希望の企業に決断のための情報を提供します。これは新しい形のビジネスマッチングとして、特定産業の質の良い情報の提供になります
◦助言・協力は、例えば、TJICのもっとも重要な活動の1つの経営管理、人材管理、育成などです。

第4問:TJICの対象は製造業だけでしょうか、あるいは他のビジネスと産業を含むでしょうか。
◦製造産業でなく、他の産業、例えば、サービス、商業、運送業、農業なども同じような問題を持っています。従って、製造業以外も広く支援することもできます。

第5問:TJICは人材開発についてどういう方針または政策を持っているでしょうか。
◦ビジネスと産業の要望に応える質の高い人材を開発することはTJICの重要な課題で、優先的に取り扱います。例えば、技術者、技能者、ITスタッフなどが不足しており、教育関係機関が需要に応え、現在もある程度取り組んでいます。特に、Re-Skill、Up–Skill研修の形式です。インダストリー4.0に向かって、イノベーションに力を入れ、ある程度政府機関や民間企業がそれに参加しています。人材開発インスティチュート、自動生産技術およびロボット分野人材開発インスティチュート、クボタの模範工業プロジェクト、PTTのイノベーションシティ、またSumipol Institute of Manufacturing Technology (SIMTec)です。
◦技術・技能者開発育成の1つの事例としてSIMTecを紹介します。2年前に設立され、場所は、ラヨン県のアマタシテイ工業団地の入り口にあります。国と民間機関あわせて14機関が協力し、収益目的ではありません。国内外の約20社の日本企業から最新の機械設備をサポートしていただいて、その機械設備を使って教育研修を行っています。私はこのSIMTecの会長でもあります。
◦設立目的は、1)インダストリー4.0時代の産業界の期待に応える、2)最新技術の機械設備による、各製造分野をよく理解できる、3)技能勤労者(技術者)を育成する、ということです。これは今まで、どの国にもない協力とも言えます。
◦研修対象は産業分野の技術者、技能者または教育機関の指導員、学生で、実践的方法を強調して指導します。現在、1)機械加工戦略 2)計測革新 3)工場自動化 4)工業経営の4グループに分けて指導しています。費用はカリキュラムごとに違います。(詳細はwww.simtec.or.th をご覧ください)。

第7問:タイ国内だけではなく、海外にある日本の経済ビジネス機関との協力関係については、いかがでしょうか。
◦日本拠点の経済ビジネス機関、例えば経団連、または関経連、JETRO、NEDO、AOTS、
JCCとJICAなどには、最初から設立連絡をしました。また二国間だけではなく、多国間の形で多方面の協力を目指していきます。 第8問:TJICに連絡または問い合わせするには日本語でよろしいですか。どんなチャンネルがあるでしょうか。
◦TJICはFTIの管轄機関ですので、ここにTJIC専用の事務室を設けてあります。日本語がよくできるスタッフもいます。理事たちも日本語ができますので、日本語で連絡することには支障がありません。 (お問い合わせ:タイ工業連盟ウェブサイトwww.fti.or.th、TJICの事務局の電話番号02‐345-1134、E-mail:sanitv@fti.or.th)

2022年5月1日掲載

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