タカハシ社長の南国奮闘録

第119話 タイに進出した 中小企業の物語

社風を変える

昨年度30人近く減った社員も新たに20人が加わり新しい風が入ってきた。これからの時代はロボット化、DX化がより一層加速していくが、一方でエンジニアリング力の高い人材が必要となってくる。

そのエンジニアリング力を高めるにはまず社内風土から変えないといけない。社員が大きく入れ替わった今こそが会社を変える大チャンスだ。2022年6月から「ティール組織」で新体制をスタートした。「ティール組織」とは自律分散型で各事業所、各セクション、社員個人が行動責任と権限を有し結果責任も持つ組織のこと。つまり、社員一人ひとりが主体的に考え行動し、チームの使命を感じながら個々の意志決定によってありのまま動く次世代型の組織だ。

行動責任や結果責任というと社員個人への重責が辛いように感じるが、社員一人ひとりが自分の仕事に対し主体的に考え動くことに楽しさを感じる、それに得た結果を評価されることでやる気につながるという流れこそこの新体制のポイントだ。

号令一下のヒエラルキー組織では部下の自主性が失われ、おまけに役員クラスにも指示待ち族を作ってしまう。今までの組織では私が抜けた場合、自分で考えて行動できる人がおらず流れが停滞してしまうことが大きな懸念だった。

そこで始めたのが生産管理部を持たない営業と工場だけのシンプルな組織体だ。今回の組織改革の肝になる。もちろん品証部や総務部は存在しているが、納期管理を各工場で行うため、納期がつまずくと課題はその工場のみの責任となり、そこを改善すれば納期の問題はなくなる寸法となる。工場、部署単位でも「ティール組織」を適応するのだ。

そして今回さらに社風を変えるポイントはリーダーの交代だ。30代前半の若きリーダー候補に工場長代理として工場の進行を任せることにした。ただ任せるのではなく、フォローを怠らずしっかり育て上げる。損益計算書、貸借対照表はもとより工場管理のいろは、リーダーとしての在り方、さらには自分の次のリーダーを育て上げ得る資質をも身に着けて工場長に格上げをする。若い世代にとっては未知なる挑戦になるが、得られる経験は大きい。

技術面での基礎知識はテクニアカレッジにて固めていく。テクニアカレッジでは、日々の業務で聞くことのできない細かな基礎知識から習得し、ものづくりの楽しさを知ってもらい仕事への主体性へ繋げていく。そして技術基礎と同じくらい大切なのは社員のマインドだ。会社の経営への関心を持ってもらい、会社をより良くしていくために考え行動してくれる社員を育てる。そのためには生産部分だけの評価ではなく、社内で起こる歪みに対し積極的に問題解決を提案する姿勢を評価していく。そこにはきちんと報酬という形で恩返しを行う。

そして最も大事なのが社長のマインドだ。大きな変革に一番手っ取り早いのは社長の交代だ。でもそれができなければ社長自らを変化させればよい。今まで何度も試みたがなかなかできなかった。なぜなら私は社員に嫌われたくないという意識から厳しいことを言うことを避けてきた。しかし、それは無責任な優しさで自分本位であったことに気が付いた。相手にとって本当に必要な言葉は何か、相手のことを考え向き合い、これからは厳しさという強い優しさで社員を守っていきたい。

私が変われば会社は変わる。ドラッガーも社長のマインドイノベーションが最大で最高の革新だと伝えている。危機感のある今だからこそできる大勝負だ。「お客様のご愛顧の上ですべては成り立っている」ということを、すべての社員に浸透させることができたら今回の改革は成功といえる。そう言えるその日まで今は邁進し続けるのみだ。

2022年7月25日掲載

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