泰日工業大学 ものづくりの教育現場から

79回『日本でのTNI卒業生の採用』 

タイでものづくり教育を進める泰日工業大学(TNI)の例をもとに、中核産業人材の採用・育成について検討します。TNIでは、毎年1月に百数十社の日系企業等と学生が出会う場としてジョブフェアを設けています。今年も1月9日には121社(8割が日系企業)がブースを設けていただきました。また日本からも静岡県、埼玉県、神奈川県と共に会社が直接ブースを設け、学生に日本で働くことを勧誘されています。TNI生の日本での就職は、日本側の高度人材の需要とTNI生の日本語能力や専門能力、日本企業(組織)の知識や意欲などがマッチした結果20人程になり、今後さらに増える傾向です。ここに紹介するトリプルワン社は日本でのインターンシップも受け入れていただき、その後の就職を含め、現在8人が働いています。以下は同社の塩田社長にTNIのJセミナーで講演いただいたものを要約したものです。

トリプルワン社におけるTNI卒業生の日本採用事例   塩田 秀明(しおだ ひであき)代表取締役

 

. 会社概要

  • 設立:1995年4月
  • 代表:代表取締役 塩田 秀明
  • 売上高: 11億6447万円(2017年10月期)、Tokyo Pro Market上場(2017年6月)
  • 主要顧客:大手半導体・電機メーカー(東証一部)等
  • 事業内容:半導体・電子部品の提供と部品調達のEMS、LSI開発設計技術をベースとしたハードウェア・ソフトウェアの開発設計サービス、メカトロニクスの設計開発から加工・組立・製造

➡東京の地下鉄・人形町駅から徒歩3分のビル(写真)の3階。80%は技術職。

2. 採用した理由、きっかけ

  • 求人:採用困難
  • 海外に目を向けて:2015年日本のサイトでタイ人が仕事探しに使用しているHPに求人掲載したところ、TNI卒業生で日本に語学留学中のタナラック氏(写真)が応募し、面接して採用した

➡少子高齢化の日本で、大卒応募者の激減がきっかけ。これまで中国他の外国人も採用していたが、それまでTNIを知らなかった。

3. どのように採用したか

  • JTECS(日・タイ経済協力協会)のインターンシップ制度を活用〈2018年で3期目〉
  • 過去7名インターンシップ受入:一昨年度3名(2名)、昨年度4名(2名)、うち4名採用
  • 企業・学生双方にとってリスクが少ない。今後も継続してほしい

➡経済産業省補助の6週間のインターンシップで日本人とタイ人が相互に深く理解し、仕事や価値観などギャップを埋められる。

4. どのように採用したか

  • 毎年1月のTNIジョブフェアに参加
    • OB、OGの活用
    • 奨学制度(今期からの取り組み)

➡ジョブフェアにインターンシップ学生が声をかけてくれ、百数十名の応募があった。

5. 仕事内容        

  • ソフトウェア担当 2名、ハードウェア担当2名、新人 3名
  • 給与・待遇等は日本人と同等
  • 第1期生は3年目、まだスキルレベルは初級だが、今後のレベルアップに期待

➡会社内だけでなく、外部の大手電機会社でも仕事をさせてもらい、経験を積んでいる。またタイ人が入ることで、会社の雰囲気が向上している。

6. メリット                   

  • 少子化や好景気で、学生採用が困難な状況で技術者の定員の充足に繋がっている
  • 既存社員の国際意識の向上

日本の新聞でも、日本の大卒は3年で辞める場合が30%いる状況で、昔は会社が社員を選んでいたが、今は反対の世の中になり、このような中で、TNI卒業生は先駆的役割を担っている。

7. 今後期待すること

  • TNIに対して
    • 大学の講義内容をより実践的にしてほしい
    • 仕事内容より、日本に行きたいという興味が強い学生が多い、仕事に対する意識付けを強くしてほしい
    • TNI学生に対して
    • 在学中の日本語能力の向上(最低でもN3レベル)
    • 将来的にはタイの現地法人設立も視野に入れている。中核メンバーとして期待している。

➡ジョブフェアでの学生との経験に基づき、情報技術学部には、会社からもより実践的な内容を提案したが、仕事と就職について指導をより充実してもらいたい。

8. 質疑応答 タイの大卒新卒でビザの問題はないか?

➡日本の在留資格が緩和され、「技術・人文知識・国際業務」として、問題なく受け入れられる(TNI卒業生は100人以上が日本で働いている)。

日本人とタイ人との差は?

➡日本人学卒と同じ訓練をしているが、言葉の問題はあっても差はない。タイ人は日本人より、アピール面で、あまり突っ込んで聞かなく、大人しい印象があるが、コミュニケーションについては日報交換で、今日やってきたことを報告してもらい、色々確認している。間違いはなく、スピード、作り込み、意識差などの対話で、「まだ若いので失敗を恐れないように」と激励している。

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