工業団地販売面積の拡大続く 初の海外進出はベトナムへ

タイ最大手の工業団地と大型倉庫の開発運営会社WHAコーポレーションパブリックカンパニー(タイ証券取引所上場)のナードン(DAVID R. NARDONE)WHA副会長に2年ぶりに単独会見した。同氏はWHAグループの工業団地や国際部門の最高責任者。2018年8月末付WHAグループ資料によれば同社は建設中も含めタイで工業団地を計48,586ライ(1ライは1,600平方メートル)開発しており、入居契約企業の36%が日本企業。WHAグループのデジタルハブ(データセンター)部門は日本企業との技術提携で実施されており、太陽光発電所、廃棄物発電所などユーティリティ部門でも日本企業と組むなど日本企業との関係も深い。WHAグループが運営する9カ所の工業団地の内、8カ所はタイ政府が進める東部経済回廊(EEC)の開発区域にあり、EEC管理委員会から「工業振興ゾーン」として承認されて販売好調が続いている。ヘマラート・ランド・アンド・ディベロップメントで長く社長兼CEOを務めたナードンWHA副会長は、現在のEEC開発地域を東洋のデトロイトと呼んだ名付け親。1995年にマツダとフォード合弁のオート・アライアンス・タイランド(AAT)が現在のWHAのイースタン・シーボード工業団地に進出し、ピックアップトラックを生産することになった時の記者会見でナードン氏が“東洋のデトロイト”と表現したことで広まった。

取材・文 アジアビジネスライター 松田健

――WHAグループへの自動車組立産業の進出では1996年にゼネラル・モーターズ(GM)もイースタン・シーボード工業団地に進出してピックアップトラック生産を開始、その後スズキなども進出してWHAに入居している工場の34%が自動車関連になっていますね。

ナードン 大型二輪メーカーのハーレーダビッドソンは従来からタイに販売店を構えて米国工場からの輸入車を販売していたが、WHAイースタンシ―ボード工業団地に初のタイ工場をこのほど稼働させた(米国トランプ政権の中国政府との「貿易戦争」による関税アップに伴う米国での生産の危機を逃れるためにハーレーダビッドソンがタイで大型二輪の生産に乗り出したことは世界的なニュースになっている)。

中国大手の自動車組立メーカーである上海汽車集団(SAIC=本社上海市)とタイの大手財閥であるCPグループの合弁会社であるSAICモーターCP(上汽正大公司)の本格的な自動車生産も開始されており、2018年9月にはタイ政府の投資委員会(BOI)に申請していたPHV(プラグインハイブリッド車)の生産が認可されている。イースタンシ―ボード工業団地でマツダとフォード合弁の)AATの工場は約550ライ、スズキは約400ライほどだからSAICモーターCPの437ライの工場スペースは世界的な自動車組立工場の規模だ(同社はタイ進出当初はWHAのレンタル工場で試験生産をしていたがヘマラート・イースタン・シーボード工業団地2=現在のWHA ESIE2=の437.5ライの土地を2015年11月に契約、「MG」車を生産する新工場を2017年12月に完成、年産20万台の生産を目指しており、2018年には3万台の生産販売を見込んでいる)。

――WHAはベトナム北中部のゲアン(Nghe An)省で工業団地の開発を2017年から始めました。ベトナムの現状はどのようになっていますか?

ナードン ベトナムの首都であるハノイから南方に288キロ地点に「WHAインダストリーゾーン1」として潜在的な用地3,200ヘクタールを手当している。第1期は498ヘクタールで内145ヘクタールをまず開発している。2018年3月10日に着工式を行った。2019年の第2四半期に工場建設が可能となる。現在、契約待ちになっているのは2社あり、タイの建設資材メーカーとタイの食品加工工場。この両社とも生産する製品はベトナム市場を狙っている。2019年中に10~15社と進出契約を結び計200~300ライを販売したい。

韓国企業や日本企業の誘致を狙っている。中国企業も歓迎だが今のところは想定外だ。WHAの工業団地があるゲアン省から近く、ハノイやハイフォンへの途中のタインホア省に日本企業による石油コンプレックス(ニソン製油所)がごく最近完成したばかり。そこに納入する機材などのメーカーにとってゲアンのWHAの工業団地はベストのロケーションのはずだ。すでにビン、ハティン、ラオスを横断してタイのムクダハンを通るルートでタイとの陸路も使えるし、今後、日系のロジスティクスも使えるかも知れない。

――WHAにとって初の海外進出先をベトナムのゲアン省に決めた理由はなんですか?

ナードン ゲアン省は1万6,000平方キロメートルとベトナムの最大省で省の経済成長率は10.5%と国の平均よりも高い。320万の人口で190万の労働力がある。1平方メートルあたり38米ドルの団地の販売価格はホーチミンに比べても魅力的なはずだ。コンテナ輸送は現状では近くのGUA LO国際港から北部のハイフォン港に海路を運んでトランスシップメント(積み替え)が必要となる。道路に関してはハノイから4時間から4時間半で移動できるように改善されてきており、道路拡張工事も進んでいる。

――WHAが2018年8月に更新したデータでは、WHAの工業団地に進出している企業は国別に日本が最大の36%、ついでタイの19%、欧州12%、米国8%、オーストラリア4%、台湾4%、中国4%、韓国3%、インド2%の順。前回の取材時にもらった2016年のWHAの同データと比較してみたが、比率が変化したのは日本で、2年前の38%から2%下がっている。一方、中国は2年前の3%から現在は4%に、台湾も3%から現在の4%に高まっている。今後、中国企業の進出はどれくらい増えそうですか?

ナードン 我々の工業団地で現在4%の中国企業の割合は20%には増える。中国では生産コストが高くなっているので、タイへの投資は今後さらに増えていくことは間違いない。WHAでは中国企業を誘致するための特別チームなどはおいていないが、数人の中国語ができるタイ人スタッフを抱え、上海には法規などにも対応できるWHAの連絡事務所を構えて中国企業の進出に備えている。

会社情報

会社名 WHA CORPORATION
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