タイで高機能化粧品容器を一貫生産 日本から5社共同で海外進出 GLASEL(THAILAND)CO., LTD.

近年、成長を続ける東南アジアの化粧品市場。現地での生産や販売を強化している日本企業も多い。最近では大手化粧品メーカーがベトナムで主力工場を稼働させている。その中で、2012年にタイに進出したのが化粧品容器の製造、販売を行うグラセルタイランド(谷村敏昭社長、一迫守MD)だ。2015年からは工場が本格稼働し、徐々に生産量を伸ばしてきている。同社の現状を谷村社長に聞いた。

 

各分野で強みを持つ5社が集結

グラセルタイランドの特長の一つが、日本企業5社による合同進出という点。中心となったのが化粧品容器などの開発、提案を手掛けるグラセル(本社:大阪府茨木市、谷村敏昭社長)。同社に加えて、各種プラスチック容器製造の第一化工(本社:奈良県奈良市、三木茂生社長)、化粧品容器製造のプラハード(本社:大阪府東大阪市、宮本元徹社長)、金型製作のビート(本社:大阪府東大阪市、金田和也社長)、そして真空蒸着などプラスチック成型品への表面処理を主とする津田工業(本社:埼玉県比企郡、津田健社長)という、日本で取引関係があり、それぞれ得意とする分野を持つ5社が出資してグラセルタイランドが誕生した。

タイでは各社の特長を活かして、金型、インジェクション成形、インジェクションブロー成形、ダイレクトブロー成形(多層含む)、塗装(UV)、真空蒸着、印刷、検査までを一貫して行う体制を整えた。5社からそれぞれ社員が出向。仕掛品は異物が入らないようすべて箱詰めされ、印刷工程での数メートルの搬送でも箱に入れる。最終検査の前に、各工程で全数検査を実施するなど、日本と同等の品質管理を徹底している。プラスチックを金属の質感へ変えてしまう蒸着塗装に関して、津田工業は日本でトップクラスの技術を持つ。谷村社長は「塗装蒸着の設備を持っているのは絶対に強いと思います。競争力が付いた」と話す。印刷はホットスタンプ、自動印刷機も導入している。

 

日タイで人材育成を加速

工場のラインには日本の各社で1年以上の研修を受けたタイ人従業員が中心者として働く。来年からは3年間の研修を受けたメンバーが帰国してくる予定で、さらなる品質向上が期待できる。その点、谷村社長も「来年以降が楽しみ」と語る。工場に置かれた機械は、すべて日本で使っているものと同じ。日本で研修してきた従業員にとって使い慣れているのはもちろんのこと、機械にトラブルが発生した時などに日本からの指示をそのまま反映できるというメリットもある。課題は不良率。ただこれも、タイ人従業員が厳しく見過ぎているため。「測定機で測るものだけではなく、視覚による検査も重要なため、目を肥やすのに時間がかかる」(一迫MD)。

設立から2年余りが経過し、機械設備はスタート時から2倍に拡大している。谷村社長は「最初の年は月1,000万円ほどの売上で年約1億2千万円。今季は月3,000万円のペースで来ています。当初は基礎化粧品の容器が売れると思っていました。ところが蓋を開けてみたら、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープなどトイレタリー関係の容器が売れました。キャパシティーバランスから見て、工場がフル稼働するにはまだ3~4年かかると見ています」と語る。タイの顧客はまだ日系企業の方が多いが、ローカル企業からの注文も増えてきている。その背景を「日本と一緒ですね。目が厳しくなってきた。良い製品を求めてきている」と見る。

 

好調な今こそ海外展開

各社は現在、日本での事業が順調に推移している。グラセルに至っては36年連続過去最高売上を更新しているという。その中で、目当てとなる顧客もほとんどない中、いわば0からタイ進出を果たした。「いずれは日本の人口が減って、事業に影響が出ます。その時に海外に出たのでは遅いんです。良い時にタイに進出して、人材も確保していくことが大事です」と谷村社長は狙いを語る。プラハードの宮本社長も「日本の状況が良いうちに完

全稼働を目指したい」と意気込む。第一化工の三木社長は「会社として5年後、10年後を考えた時に、このままで良いのかという思いがありました。今、タイに出向しているのは2人ですけど、他のメンバーが応援に来る機会もある。日本の社員の意識が変わって来た」と進出後の社内の変化を語る。リスクを冒してタイに付いてきてくれた4社に谷村社長は「声をかけて一緒にタイに来ていただいた。こんなにうれしいことはありません」と感謝の念が尽きない。

日本人社員の成長という面でも影響があった。「日本では工場の一(いち)オペレーターでも、タイに来たら単なるオペレーターでは済まない。タイ人を教育して部門全体を見ないといけないし、他の部門とも連携しないといけない。そういったことが徐々に出来るようになってきた。彼らが日本に帰国した時に、この経験がプラスに働いてくれるはず」と谷村社長。プラハードや第一化工では、数十人規模のタイ人実習生を受け入れており、日本での人材確保が難しくなる中で大事な戦力として活躍している。日本とタイで、両国の人材が成長し合う環境が出来上がりつつある。

 

日本でグラセルは化粧品容器をいち早くシリーズ化して成功した。“容器のデパート”を目指して日本語、英語の分厚いカタログには豊富な製品群を掲載。大阪、東京、名古屋、福岡のほかタイにもショールームを設置している。さらにホームページ上ではキャップの形や容器の色などをシミューレーションできるようになっている。抜群の営業力を発揮し、製造は各地の協力工場で行う。それをタイでは一カ所に集約して拠点とした。「いざ我が身になると、(製造は)こんなに難しいものか」と勝手の違いに谷村社長は苦笑するが、タイを拠点とした世界戦略を構想している。大きな市場であるヨーロッパ、アメリカへの展開だ。「単価などの面で日本からは打って出られません。タイには一つのまとまった工場がある。タイを起点に世界へ羽ばたきたい。そうでなければ他の4社も付いてきてくれません。今は時期尚早ですが、これから先も圧倒的な一般規格型を作り続けて、数年後にはヨーロッパやアメリカの展示会に出たい。そのためにも語学力のある人材を育てたい」。谷村社長の展望は、まだまだ膨らむ。

会社情報

会社名 GLASEL(THAILAND)CO., LTD.
住所 122/23 Moo6,Tambon Bang Phriang,Amphoe Bang Bo,Samut Prakarn,10560
お問い合わせ先 Tel:02-136-2303 Fax:02-136-2305 E-mail:info@glaselthailand.com
担当者名 沼田:Mobile 096-835-4285 スパットラ:Mobile 095-572-2533
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