カワムラグループ入りから5年 アセアン市場の拠点に。新工場が竣工

2016年に河村電器産業傘下入りした「タイアイチデンキ」の新工場建替工事が完了し、今年4月に竣工を迎えた。成長著しいアセアン、アフリカ市場に向けた統括拠点として、域内の生産・販売を束ねる重責を負う。奇しくも2023年は、同社設立から半世紀(50年)の記念年でもある。新工場群体制で臨む新たな区切りを、グループ飛躍の第一歩として迎える方針だ。

地盤沈下と排水処理に衝撃

「地盤沈下や排水処理など、その現状に衝撃を受けた」と語るのは、17年8月にタイの責任者として着任した早川智宏同社社長。河村電器産業出身の生産技術のスペシャリストだ。赴任前、日本勤務時代から、タイアイチデンキの工場リニューアルプロジェクトに携わってきた。  16年9月のカワムラグループ入り後、間もなくして深刻な状態であることが判明したのが、1973年に操業を開始した工場群の老朽化だった。40年以上が経過し、軟弱地盤による地盤沈下も大きいところでは40センチ以上にも達していた。地下にいくつもの空洞層ができて水が溜まり、体長2メートルにはなろうかというミズオオトカゲが棲み着く有様だった。  加えて対策が急務とされたのが、工場から排出される洗浄液などの排水処理だった。40年もの間にタイ国内の廃液処理規制も強化がされていた。国際的な環境への関心も高まっていたが、現状では十分に対応しきれてはいなかった。これからもタイで事業を継続していくならば、日本に準じた高度な排水処理設備が必要だった。こうして各工場の全面建替が進められた。

塗装・板金工場の建て替え

旧工場の解体・新築工事は18年2月からスタートした。主力の配電盤などへの塗装を行う塗装工場を第一工区に指定。溶剤塗装が主だった製品の仕様を、粉体塗装主体に改めることも合わせて目的とされた。技術者の個人スキルに依存しがちだった工程を、電気による吸着という最新技術を使って誰にでも容易に作業ができるようにする狙いもあった。この生産設備は自動化が進み、他メーカーを凌ぐ自慢の設備となっている。  第二工区の板金工場の建て替えが始まったのは19年初めのことだった。同様に、重荷重に耐えるための杭打ちから工事は始まった。軟弱地盤のハンデを克服するには10メートル以上深く地中にある岩盤にまで杭を打たなくてはならない。1棟あたり200~300箇所。杭打ちだけで相当の日数を要した。日本基準と比べても遜色ない、安定した建屋を建てる基盤が備わった。  新築した板金工場には、作業場確保のための空間利用や作業効率向上の観点から、15段の材料棚が2箇所に新設された。主力製品である配電盤向けなどに加工される鋼材や銅バーの保管場所が確保されたことで、工場内の余剰空間も広がった。事故の起きにくい職場環境と効率的なモノの流し方の整流化が整った。

福利厚生も拡充

最終工区となる事務棟の建替工事は2020年初頭から開始された。敷地内の別棟にあった従業員用食堂(キャンティーン)、さらには社外に借りていた資材倉庫の機能も建屋内に取り込んだ総合社屋とする計画だった。3階には200人近くが収用でき月1回の全体朝礼も可能な講堂や、プロジェクターを備えた会議室も設置することとした。  新築された新事務棟の1階には、一度に最低でも50~60人は着席できようかという食堂が設置された。冷房も完備し、朝食と昼食向けに暖かい豊富な食事が安価(23バーツ~)で提供されている。スマートフォンでQRコードを読み込めば支払いもスムーズに行くシステムも導入した。  建て替え前の非冷房、メニューの少ない食堂は一新され、今では多くの従業員から高い評価を得るまでとなった。1日あたり30食にも満たなかったことのあった食堂利用が、今では160食前後に上っていることからもそれは分かる。福利厚生の充実は、従業員のモチベーションアップに確実につながっている。

半世紀の実績と知見を武器に

タイアイチデンキの工場建て替えは、2030年に向けたカワムラグループの長期経営計画の一つに位置づけられている。人口6億人のアセアン市場のマザー工場として、この地域の生産と販売を統括する期待と役割が込められている。事実上の傘下にはベトナム工場があり、アフリカ市場では政府開発援助(ODA)の指定会社としてのもう一つの顔も合わせ持つ。満5年をかけた工場刷新には、こうした意義と目的があった。  2年後には設立から満50周年を迎えるタイアイチデンキだが、カワムラグループ入りしてからも社名は従前のままだ。タイに半世紀。南国の大地に根付いた実績と知見をむしろ活かし、グループの成長につなげるという戦略があった。家庭用分電盤とブレーカを中国から輸入・販売するために設置していた子会社Karamura Electric Sales (THAILAND) Co.,Ltd.の統合も終えた。また今後は親会社である河村電器産業の「標準化技術」を取り入れた商品開発を目論んでいる。  2030年には現在の売り上げを3.3倍の約30億円にまで高めることが喫緊の課題だ。そのためには、インドネシアやミャンマー、カンボジアなど周辺国への販売拡大も図らなければならない。各種配電盤メーカーとの協業や資本提携、M&Aなども視野に入れる。名実共にグループのアセアン統括拠点として同社は今、第2の創業を迎えている。

2021年7月1日掲載

会社情報

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