3次元CAD/CAM「Mastercam」販売に全力 簡単操作などカスタマイズで顧客満足追求

Mastercamはマシニングや複合加工などに豊富な機能と汎用性の高さで幅広く対応する3次元CAD/CAM(コンピュータ試験設計・製造)ソフト。JBM SA(THAILAND)は、この英語版ソフトMastercamの本家である米国CNCソフトウェアの日本総代理権を持つJBM(本社:東大阪市)と、共栄エンジニアリング(本社:新潟県阿賀野市)が共同出資した合弁会社としてスタートした。社名に含まれている「SA」は南アジアの略称。現在は共栄エンジニアリンググループ100%出資の会社であり、JBMとは業務提携を結ぶ立場にある。

共栄エンジニアリングは2000年にCAD/CAMセンターとしての現地法人であるKYOEI SYSTEMSをバンコクに設立。翌年、バンコク郊外ランシットにある工場団地に加工工場であるKYOEI PRECISlONを設立した。タイでMastercamの販売を行うJBM SA(THAILAND)では“生産現場に近い場所で顧客サービスを図る”という経営方針から、KYOEI PRECISlONの工場内に本拠を置いて活動している。

共栄エンジニアリングは工業製品の試作製作を主目的に1990年6月18日に設立された。金型製作、射出成形量産へと営業品目を徐々に増やし、今日までに音響や光の設計開発など従来にはない高機能性が付加できる素材の開発、ナノスケールでそれを具現化する超精密微細加工をはじめとする各種の生産体制を整えてきた。現在はグループで約50億円の年商規模。

きめ細かなサービスで差別化図る

JBM SA(THAILAND)の唯一の日本人がセールスマネージャーを務める木下聡(きのした・さとる)氏。同社はMastercam を直販と代理店経由の2ルートで販売している。代理店としてタイの日系大手商社とも契約しており、タイの日系大手メーカーの子会社への販売も多い。

タイにはシンガポールの華僑系やインドから来ているインド系の販売店もMastercamをシンガポールやインド経由で販売しているが、JBM SA(THAILAND)はCNCソフトウェアから直接輸入で販売している。「(シンガポールやインド系販売会社では)多少は安く売っているようですが、サポートがない売り切りの状態で販売をしているようです。しかし当社では顧客が加工したいことを最初から実現してもらえるようにあらゆるサポート付きで納入しています。当社と競合会社では見る方向がまったく異なりますから我々が勝てる自信があります」と木下マネージャーは話す。

JBM SA(THAILAND)ではMastercamの販売にあたり、初回の販売契約時点から1割ほどのサービス料を毎年支払ってもらう契約で販売している。「レベルが低いオペレータがいる工場向けにはより操作を簡単にカスタマイズするなど、顧客ごとにかゆいところに手が届くようにしてから販売しています」と木下マネージャーは狙いを話す。

他社との差別化として、例えばタイでは一般に難しい3次元データを(加工が早い)2次元に簡単に落とすことができる方法なども顧客に指導している。共栄エンジニアリングの加工現場を知り尽くした日本人エンジニアの協力も得て、ソフト、5軸機械、冶具などの豊富な知識を駆使して省力化、精度の向上、段取り時間の短縮なども提案している。1台のMastercam で複数の工作機械を稼働させるNCプログラム(ポストプロセッサー)の修正、開発も同社では手掛けている。また、同時5軸加工といった機械の高度化が進む一方で、2軸加工も簡単にできるようにカスタマイズしている。

女性セールスエンジニアも活躍

顧客の約6割が日系企業では残りがタイ企業。木下マネージャーは「5~6年ほど前から客先で当社と先方のタイ人同士による商談が増えています。これはタイ人に決定権が移ってきたからでしょう。とりわけ2011年の洪水の頃からこの傾向がでてきたように感じています」と明かす。タイ人従業員は5人で内4人が女性。実働部隊であるセールスエンジニアは3人で、男性は1人だけ。全員が大卒で給与は能力に応じて2万から5万バーツとなっている。木下マネージャーは「辞めるタイ人従業員が少ないのは仕事に関心を持っているからだと思う。10年間は努力してもらわなければ一人前になれません。一般にタイ人が10年間を我慢することは難しいですが、仕事を面白いと感じてくれたタイ人の中にはやり続けそうな人材がでてきています」と木下マネージャーは話す。

木下マネージャーにとっての悩みは能力ある女性のタイ人セールスエンジニアを客先の工場に派遣した時、トレーニングを受ける先方の工場の男性従業員が女性だとして軽視して来るケースが多いこと。木下マネージャーは「タイではまだ古い慣習、文化が残っています。加工現場は男の職場だというプライドがあるのは。でも時間が過ぎれば彼らの態度も変わるでしょう」と女性従業員を慰める。

独立したいタイ人社員が出た場合、無理に引き留めないという。辞めた社員がJBM SA(THAILAND)の代理店としてMastercamを販売しているケースもある。木下マネージャーは、独立したとしても食べていける技能を持つエンジニアに育って欲しいと考えている。そのためには「これまでに手掛けたことがないケースを与えるなどして経験値をあげてもらっている」という。そして木下マネージャーの目標は「タイの体制を底上げして、いつか私がいなくてもタイ人だけで動かせる会社にしたい」こと。

Mastercamとは十代からの付き合い

タイではコピー製品が100バーツ、200バーツ程度で出回っているが、木下マネージャーはさほど目くじらを立てていない。「コピーを認めるわけではないですが、宣伝になっている面もあります。CAMはコピーでなんとか動かせても、正規ライセンスがある本物でなければ使えなくなり、機械が止まったりして急遽当社に駆け込んで来るローカルの製造業もあります。生産を止めるわけに行かないからです。タイ警察と組んで違法コピー追放活動を展開しているBSAという米国のソフトウェア業界団体に摘発された会社が、罰金を取られた上に本物を買えと指導されて買いに来られるケースもあります」。

木下マネージャーは高校時代からMastercamには親しんでいたという。父親(故人)が横浜でMastercamを販売していたからだ。母親(故人)も、まだフロッピーもなくテープが記憶媒体だった時代にソフトのバグを取り除いたりするデバッカーだった。そのような家庭環境で育ったため、高校生の時からMastercamを稼働させてCAD・CAMに関心を持った。「当時はDOSベース(V1~9)の時代。その後WindowsベースのXシリーズ(X~X9)の時代となり、今では2018年モデルが発売されたばかりです」と変遷を見てきた。

武蔵工業大学(現在の東京都市大学)ではエネルギー基礎工学科で原子力を専攻していたが、大学を中退して父親の会社に入社。その会社はすでにタイに出先を構えていたことから、木下マネージャーはタイに来て17年になる。タイで1人でMastercamの販売をしてきた木下氏だが、40歳が近づいた近年、同社を閉じてJBM SA(THAILAND)に移籍した。

 

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JBM SA(THAILAND)CO., LTD

 

Tel:0-2516-0931 Fax:0-2902-0426 http://www.jbm.co.th

担当:木下 Mobile:081-848-9335 E-mail:toiawase@jbm.co.th

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