水や油などあらゆる漏れや異音を検知
「異常」を発見するプロフェッショナル集団

東京・八王子に本社を置く「コスモ計器」は、自動車の内燃機関や各種タンクなどからの水、油、燃料といった「漏れ」を発見することから急成長した技術集団。1970年代初め、量産型のエアリークテスターの開発に成功。主力メーカーへの納入となった。これが契機となってリークテスト(漏れ検査)のパイオニアとして全国に名を轟かせていく。その後は、ガス漏れや、振動から生じる異音検査などにもウイングを広げ、日本国内はもとより海外へと展開をしていった。タイへは2001年に進出。自動車、医療、食品加工など幅広い分野で活躍する。人々の暮らしの電子化が進む今、その可能性は無限に広がっている。

トヨタ自動車からの  要請がきっかけ

コスモ計器は、航空計器の技術開発者だった故古瀬清元社長によって設立された。東京大学工学部卒業後、海上自衛隊技官や精密機器メーカーの技術者として勤務。1970年6月、東京・町田にあった自宅を改修し、工場兼オフィスとして出発した。

自動車のエンジンに使われるシリンダーブロックやヘッドといった主要部品の巣漏れ検査は、かつては対象物を水没させ、出てくる気泡を目視で検視する水没目視検査が一般的だった。だが、検査に労力と時間がかかりコストも増すうえに、検査人によって精度が異なるなど不安が大きかった。量産化にも不向きだった。

こうした折り、世界に挑むトヨタ自動車から白羽の矢を立てられたのが、精密機器メーカーの東京航空計器にあって圧力変換器などの研究開発で知られた古瀬氏だった。「エンジン部品の巣漏れを検出する自動検出器を造ってほしい」。周囲のすすめもあって同氏は独立を決意。高性能なリークテスターの開発に心血を注ぐこととなった。

エアリークテスターの誕生

属人的な経験と勘に頼らずに短時間で安定した検査結果を得るためには、データを数値化し管理する以外に道はないと考えた。しかも、コストはギリギリまで抑えなくてはならない。開発後の量産化も必要だ。あらゆる可能性をくまなく満足させるために採用したのが、コストゼロの空気圧を活用した新たな検査方法だった。前職の経験が見事に活かされた。

間もなくして、自動検出器の心臓部である高感度差圧センサーが開発された。ほんのわずかな空気圧の差によって巣漏れを探し当てることに成功。その後、機器は量産され、国内のほとんどの自動車メーカーやエンジンメーカーで採用されることになった。「エアリークテスターLSシリーズ」。同社発展の礎を築いた主力製品だ。

空気圧を活用し巣漏れを見つけ出した技術は、やがて油漏れ、燃料漏れ、空気漏れ、ガス漏れといったさまざまな分野に応用されていった。例えば、物流・保管倉庫といった場所で使用される冷凍冷蔵機器用のコンプレッサー。オフィスの空調。不良が続けば電気代の負担も大きくなる。多種多様な社会のニーズが、同社の技術を必要としていった。

振動・異音検査分野に進出

タイに進出した2000年代初頭は、名だたる日本車メーカーがこぞって現地化を推進・展開した時期にあった。現地で組み立てが進めば、そのための入念な検査工程も同じ場所で必要となる。人が運転し、人の暮らしとともにある自動車だからこそ、安心安全の上からも決して手を抜くわけにはいかなかった。日本国内と同様に高い検査水準が求められた。

こうした中で新たにニーズが高まってきたのが、さまざまな音が重なり合う工場などの中で異常な音を検知する仕組み作りだった。従来であればベテランの職人たちが、目視をし、掌で触れ、五感を使ってわずかな原因となる振動を見つけ出していた。神がかりとも言える技。「機械にはできないのか」。自動化が求められる中、高い壁が立ちはだかった。

振動から生まれる異音を解析する必要性は、職人不足が顕著となりつつあった日本市場でもすでに高まっていた。こうして開発されたのが同社の異音検査システム「ムーブレットインラインテスター MV-6000B」。自動車など製造業が集積するタイ市場にとっても、待ち焦がれた新時代の検査システムだった。本格導入は3年前から始まった。

「今まで聞こえなかった  異音が聞こえる」

異音検査が正常に作動するかどうかは、ひとえに機器に導入される音の情報量にかかっていた。工場や現場ごとに音の量も質も異なってくる。音声データを一つ一つ増幅させて読み取り、電気信号に変換する作業は途方もない長い道のりだった。自社開発の特殊な解析フィルタを使って雑音を除去した先に、求める音源があった。

 

内燃機関を持たない電気自動車(EV)や、電動力と併用するハイブリッド車(HV)の開発・登場もこうした動きを大きく加速させた。エンジンだけに頼らない次世代の環境自動車は、車そのものが発する音を少なくし、乗車空間をこれまで以上に静かなものにさせた。反面、そこに新たに克服しなければならない〝異音〟が生れていった。

「車が静かになったことで、今まで聞こえなかった異音が聞こえるようになった。すると、今度はその音が正常なものなのか、異常なものなのかを判別する必要が生じてきた」とタイ法人の西村宏テクニカルディレクター(TD)。音を検知し、解析を求める市場は、加速度的な展開を見せて拡大している。

リークテストへの〝原点回帰〟

タイ進出から来年で満20年を迎える今、西村TDは〝原点回帰〟の重要性についても痛感をしている。水漏れ、油漏れ、燃料漏れ、ガス漏れから始まった同社のリークテストは、とうとう難易度の高いとされる異音検査をも可能とさせ、バリエーションと間口の広さを確かなものにした。

確かに、技術の革新や新たな市場の開拓は、時代の先取りと探究心からしか生まれない。それも十分に知っている。「ただ、新しいものばかりに傾注しすぎてはいけない」とも西村TDは警鐘を鳴らす。同社が培ってきたさまざまなリークテストが果たす役割が、タイの市場ではまだまだ終わってはいないと考えるからだ。

付加価値産業の育成に舵を切るタイ政府。自動車や他の製造業にとどまらず、その対象分野は医療、美容、健康食品や各種サービス全般にまで広がっている。そこで必要とされる漏れ検査の技術。広がりの先の先はまだ見えない。

(2019年10月号掲載)

 

会社情報

会社名 Cosmowave Technology Co., Ltd.
住所 52/42, Soi Krungthepkrita 13/1, Saphansung, Saphansung, Bangkok 10250
お問い合わせ先 Web:www.cosmowave-tech.com
担当者名 Mr. Nishimura(JP/EN) Mobile:084-361-7135 / E-mail:Hiroshi_Nishimura@ns.cosmo-k.co.jp
Mr. Winai(TH/EN) Mobile:089-921-6721 / E-mail:ckwinai@cosmowave.co.th
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