あくなき“倍速加工”への挑戦 Intermachで多彩な新製品をPR

自動車や航空宇宙など幅広い産業に超硬切削工具を提供しているタンガロイ(本社:福島県いわき市)。2008年にはウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーハサウェイが出資する切削工具メーカーグループIMCに参入、世界20カ国以上に拠点をもつ。タイにおいては、タンガロイ・カッティングツール(タイランド)が置かれ、販売拠点だけでなく、特殊工具の受注生産も行っており、ここ数年の自動車不況にあった中でも新規の顧客開拓などで順調に業績を伸ばしている。

豊富な製品群を抱えるタンガロイ。“倍速加工”をコンセプトに2016年に発表された新シリーズ「TungForce(タングフォース)」は順調にラインナップを拡大し、より多様なユーザーの要望に応えられるようになっている。5月16日から19日までバンコク国際貿易展示場(BITEC)で開催される東南アジア最大級の産業機械展示会「Intermach 2018」では、ホール101(ブース番号X22)で前年より広い150平方メートルのスペースを存分に使って、様々な製品をアピールする予定だ。

目玉の一つは、倍速に留まらず従来の3倍、4倍の生産性も実現するフライス加工の高送りカッタシリーズ。適正な切削速度を維持しつつ、高い送り速度で加工することが可能である。タンガロイは1990年代後半、いち早く「MillFeed(ミルフィード)TXP」シリーズを発売。その後、小型かつ高速加工をターゲットとした工作機械が増加する中、2010年に業界トップクラスの汎用性を持つ「DoFeed(ドゥーフィード)」を発売し、高送り加工におけるバリエーションを拡大していった。2016年には倍速切削のコンセプトをさらに具現化した2つの新シリーズ、独自設計のねじれ形状インサートによる強固なクランプで高い安定性かつ高生産性を実現する「DoTwist-Ball(ドゥーツイストボール)」と、シンプルで豪快な高切込み&高送り加工に対応する超高送りカッタ「MillQuad-Feed(ミル・クワッドフィード)」を発表、一層充実した製品ラインナップであらゆる加工に対応する。

旋盤加工では、加工幅、深さの多様な要望のある溝入れ加工に於いて、「TetraMini-Cut(テトラミニ・カット)」「TetraForce-Cut(テトラフォース・カット)」は独自のポケット形状で加工時に刃先位置が変化しない強固なクランプシステムを持つ。未使用コーナーへの加工中の切りくずとの接触を防ぎ、また万が一、切れ刃が欠損してもすべてのコーナーを使用することが出来る経済的な4コーナー仕様溝入れ工具だ。

また、旋盤加工用高圧クーラント対応ホルダ「TungTurn-Jet(タングターン・ジェット)」は、ホルダ内部からクーラントをインサートの刃先に最も近い位置から直接、ピンポイントで供給可能な機構を採用。通常の外部クーラントでは切りくず処理が困難であったインコネルやチタン材などの難削材などに対し、切りくずを細分化するなど切りくず処理性を大幅に改善した。同時に逃げ面のクーラント穴からも吐出、2方向からの供給で高能率と長寿命化を最大限に発揮する。高圧クーラント仕様の機械と組み合せばさらに効果を高めることが出来る。

深穴加工用ドリル「DeepTri-Drill(ディープトライドリル)」は、タンガロイがガンドリルで培ってきた深穴用工具のノウハウに基づく切れ刃と最適なガイドパット配置を採用。切れ刃にチップスプリッタを持つ独自のチップブレーカー形状で、従来のろう付けガンドリルなどに比べて抜群の切りくず処理と高い送り許容度をもたらした。

ポリゴンカップリングツーリングシステム「TungCap(タングキャップ)」は、ポリゴンテーパとフランジ端面の2面拘束により高クランプ剛性を実現。同一工具交換時の繰り返し刃先位置精度は±2 μm 以内を実現、ポリゴン形状によって、切削トルクが均等配分され、センタリング機能が向上した。これらによって、機上での刃先交換を行うよりも工具交換時間を短縮。それだけでなくセッティングルームなど機外での刃先計測によって試削りも不要とすることができ、従来の試削りの際の計測に掛かる時間、補正ミスなどによる不良品を削減して材料費を抑制することができる。

タンガロイがそこまで加工効率を突き詰めるのはなぜか。タンガロイ・カッティングツール(タイランド)のディラン社長は「全体の加工コストを見た中で、工具にかかる割合は3%ほどです。切削工具の価格など、実はほんのわずかに過ぎません。では何がコストを押し上げているかと言うと、人件費や材料費なのです。それらを削減するためには、スピードを上げて決められた時間内で従来に比べて多くの量を加工する事です。イニシャルの投資は従来に比べ高くなるかもしれませんが、全体の工程を見れば、大きなコストダウンになります」と語る。EV(電気自動車)の普及の影響に関しては「エンジンや、モーターの可変でスピードをコントロールできるようになって変速機がなくなれば、切削加工業界にとっては大きな問題でしょう」としながらも、「まだまだ将来の話では」とした。

開発競争が熾烈になる中で、自動車メーカーからは“より早く、高精度に削りたい”というニーズが出ているという。また、これまで複数で成り立っていたパーツを一つにまとめるなど、自動車の部品自体も高価になっているため、部品メーカーも出来ることなら不良品を出すのを極力避けたい。まさにタンガロイはそれらにマッチした製品を提供しているといえる。現在も続々と新しい製品を開発しており、「どんどん新製品を出しなさい、という社長号令が出ています。今までになかった加工が出来るよう製品を拡大しています。カタログの制作が追いつかないほどです」。また単に工具を提供するだけでなく、顧客の部品のデザインの段階から、部品を削りだすために工具、ジグ、機械を総合的にサポートするターンキープロジェクトへと事業領域も拡大していく。「トータルプロデューサーとしての役割を広げていきたい」。

「Intermach 2018」では、タンガロイはマシニングセンタ実機を用意して、高能率加工のデモンストレーションを行う。ディラン社長は「展示会では、カタログの2次元情報だけではなく、現物の工具を見ることができます。工具の使い方など、我々のエンジニアとも直接話すこともでき、何でも相談に応じられる体制を整えるつもりです。そのための商談スペースも、ブース内に広く設けます。ぜひ、気軽にブースにお立ち寄りいただき、皆様の加工イメージを膨らませてください」と来場者に呼びかける。

昨年は新車販売台数が2012年以来となる前年比増を記録。各メーカーが来年、再来年へ向けて動き出している。航空機など新分野のタイへの誘致政策に見られるように産業界には前向きな材料が出てきる。「Intermach 2018」の盛り上がりに注目だ。

会社情報

会社名 Tungaloy Cutting Tool (Thailand) Co. Ltd.
住所 Interlink tower 4th Fl. 1858/5-7 Bangna-Trad Road km.5 Bangna, Bangna, Bangkok 10260
お問い合わせ先 Tel:02-751-5711 Fax:02-751-5715 E-mail:info@tungaloy.co.th
担当者名
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